離婚後に慰謝料請求を行うリスク
1 慰謝料請求のタイミング
離婚問題には、慰謝料をめぐる紛争が起こることがよくあります。たとえば配偶者の不貞を理由に離婚をすることになった場合、不貞をされた配偶者は不貞をした配偶者や不貞相手に対して、慰謝料請求をすることができます。また、配偶者からDV行為があった場合にも、被害配偶者は加害配偶者に対して慰謝料請求をすることができます。
一般的に、離婚に先立って、慰謝料も含めて、離婚に伴う全ての問題(親権、養育費、財産分与等)が解決してから離婚をしますが、これに当てはまらないケースもあります。
たとえば、慰謝料問題以外についての離婚条件は整っているために、この問題を後回しにして先に離婚を成立させることがあります。また、離婚後に不貞が発覚したことによって、離婚後に慰謝料問題が発生するケースもあります。
このように、離婚後に慰謝料請求をすることには、なにかリスクがあるのでしょうか。
2 離婚後に慰謝料請求を行うリスク
① 精神的損害が発生していないと判断されるリスク
離婚前から慰謝料発生事由(不貞やDV)を夫婦が互いに認識している場合は別論、離婚後に不貞行為が発覚した場合には、そもそも離婚の原因が不貞ではなく、他の原因であると判断される可能性が高くなります。そうなると、不貞行為と離婚との因果関係がないことになってしまうため、不貞行為があったとしても慰謝料請求権は発生しません。
そのため、離婚後に、離婚前の不貞行為の証拠を見つけたとしても、金銭的な請求をすることが困難な可能性が高いです。
したがって、不貞行為が疑われる場合には、離婚前に探偵等を利用してしっかりと調査し、慰謝料請求に備えましょう。
② 時効が完成するリスク
不貞行為は、民法上の「不法行為」(民法第709条)に該当するため、損害賠償請求権が発生します。不法行為に基づく損害賠償請求権には、下記のとおり、行使期間に制限があります(民法第724条)。
(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。
このように、不法行為の時効は、加害者を知ったときから3年と、比較的短いため、離婚後に慰謝料請求をする場合には、この期間を経過しないように注意が必要です。
③ 紛争が長引くリスク
離婚について紛争が生じている場合でも、たとえば、慰謝料額等の離婚条件について争いがあるが、離婚自体については夫婦が同意しているため、先に離婚を成立させることがあります。
そのような場合、一般的に、夫にとっては婚姻費用が発生しなくなるというメリットがあり、母にとっては(親権を獲得した場合)、ひとり親として公的な支援を受けられるとうになるというメリットがあります。
しかし、離婚をしたあとに離婚条件を調整することは、離婚前と比較して困難なことが多いです。
なぜなら、離婚前は、上記のように互いに離婚を成立させることのメリットがあるため、互いに譲歩して離婚条件を決めやすいのですが、離婚してしまったあとには、完全に利害が対立してしまい、妥協点を探ることが難しくなり、紛争が長期化しやすくなります。
3 慰謝料請求は弁護士に依頼
昨今、テレビ等のメディアで不貞問題を目にすることが多く、残念ながら、「不貞」というものが身近な存在になっています。しかし、不貞についての法律問題は専門家でないと知らない部分も多くありますので、困った時には、ぜひ弁護士に相談してください。