風俗通いを理由に夫に慰謝料請求できますか?
はじめに
当事務所に寄せられたご質問にお答えいたします。
夫が風俗通いを続けています。
夫の風俗通いが初めてわかったのは、私が妊娠していたときでした。「もう行かないでほしいと言うと「わかったよ」と言うので、その言葉を信じていましたが、その後もたまに風俗店の会員カードが財布の中から見つかり、今でも通い続けているようです。何度も行かないでほしいと伝えているのに、裏切られた気分でショックです。このような夫に対して風俗通いを理由に慰謝料を請求できるのでしょうか?
信じていたご主人に裏切られ、つらいことと思います。結論から申し上げると、慰謝料の請求は可能です。しかし、場合によっては大幅に減額されるか、慰謝料の請求自体が難しいケースもあります。
風速通いを理由に慰謝料請求できる条件
夫婦には、お互いに性的に純潔を保たなければならないという「貞操義務」があります。たとえ風俗であっても、配偶者以外の人と性交渉を持ったなら、それは不貞行為にあたり、慰謝料の請求が可能です。
ただし、「ご主人の風俗店通いがきっかけで婚姻生活が破綻したこと」が慰謝料請求の条件となります。例えば、風俗店に通い続けた結果、性病にかかったり、生活が苦しくなったり、セックスレスになったりといった場合には、慰謝料請求の対象となります。
反対に、もともとセックスレスで夫が欲求の解消のために風俗店に通い始めた場合や、風俗通いを始める前から不仲ですでに婚姻生活が破綻していたといったケースでは、慰謝料を請求することは難しいでしょう。
慰謝料を請求するのは夫に対してのみ可能
風俗店でご主人の接客をした女性は、店舗に雇われているか委託業務契約に基づいて仕事として性的サービスを行っているにすぎないため、相手の女性に対して慰謝料の請求はできません。今回ご質問をいただいた方も、ご主人に対してのみ慰謝料の請求ができます。
ただし、接客した女性と勤務時間外ないし勤務する店以外で会って性交渉をしたときは、業務の範囲を超えていることから、一般的な不倫の慰謝料として、相手の女性にも請求できる可能性もあります。ただ、ホテルや自宅へ女性が派遣される出張型の風俗店もあるため、「店以外の場所で会う=不倫」とひとくくりにするのはおすすめしません。
なお、ヘルス、ピンサロ、性感マッサージなどの性交渉ではないものの、性的なサービスを行う風俗店は、厳密には性交渉をしていないので慰謝料請求できない可能性もあります。ご主人が通っていた風俗店がわかれば調べてみると良いでしょう。
他にも、慰謝料請求をより有利に進めるため、風俗店の利用明細書やショップカード、クレジットカードの使用履歴等の証拠はしっかりと残しておくことをおすすめします。
まとめ
一般的に、不倫などの慰謝料の相場は100~300万円程度とされていますが、風俗店通いの場合、精神的な苦痛の度合いが低いとされ、慰謝料もこれより低くなる傾向があります。
夫に対して慰謝料を請求し、支払いに合意したとしても、その出どころは家計から捻出しなければならないために、最終的に家計を圧迫するおそれもあります。風俗通いを理由に夫に慰謝料を請求するのは、通常の慰謝料請求よりも慎重になるべきでしょう。