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コラム

悪意の遺棄で離婚する場合の慰謝料

1 悪意の遺棄とは

悪意の遺棄とは、正当な理由のない同居・協力・扶助義務の放棄をいいます。

法律用語にいう悪意とは、ある事実を知っているということを意味しますが、ここにいう「悪意」とは、倫理的に非難されることを意味します。

 

2 悪意の遺棄にあたるかの判断要素

上述のように、「悪意」には、相手方を非難する趣旨があるため、訴訟等で、相手方の悪質性を強調するために「悪意の遺棄」が主張されることがあります。

しかし、そのような主張を検討してみると、実際には別居の原因が一方配偶者のみにあるとはいえないことが多く、別居に「正当な理由」がないとはいえない場合が多くあります。

そのため、悪意の遺棄に該当するといえるためのハードルは低くないと考えておくべきです。

では、実際に悪意の遺棄で慰謝料が認められた事例をみていきましょう。

 

 ①平成元年11月22日東京高判(判例時報1330-48)

事案の概要:婚姻期間52年(同居8年)。夫から妻への離婚請求。養女2人。婚姻8年目に妻が夫の継続的な不貞を知り別居に至る。以来夫は不貞相手と同棲。不貞相手との間に2子誕生。夫は一家で3つの会社を経営し、うち1つの会社の代表取締役。別居に際して妻には家を与えた。妻は年収110万円の年金収入のみで、自活能力なし。

慰謝料認容額:1500万円(請求額は3000万円)

算定の理由:妻は破綻の理由を作出していないのに、自己の意に反して離婚させられ、夫が不貞相手と法律上婚姻できる状態になることは妻にとって耐えがたい苦痛であるとし、夫は会社を経営して不貞相手とともに相当程度の生活を営み、不貞相手との間に子どもまで生まれているのに対し、妻は実兄の家に身を寄せて単身生活を送っていることを考慮した。

 

 ②平成9年6月12日東京地判(判例タイムズ962-224)

事案の概要:婚姻34年(約5年間家庭内別居)。妻から離婚請求。夫は転職を繰り返し、酒を飲んで暴言を吐くことがあった。また、長男を妻の両親の養子にするという問題で、意見の相違がありトラブルとなる。その後、夫は妻に対して生活費を10万円しか渡さなくなり、家庭内別居状態となる。

慰謝料認容額:200万円(請求額は500万円)

算定の理由:婚姻破綻については、夫婦双方に責任があるが、夫婦関係悪化の当初の原因は夫に責任があること、婚姻破綻が決定的になった婚姻費用分担の打切りは、夫に全面的に責任があることから、比較すると夫の方により責任があると言えるとする一方で、妻にもある程度責任があることを考慮すると、500万円の請求に対して200万円の限度で慰謝料を認めた。

 

3 悪意の遺棄に該当するか分からなかったら

上記のように、悪意の遺棄に該当するようなケースには、様々なメルクマール(婚姻費用の分担状況、経済状況、別居理由や別居先等)があります。

また、悪意の遺棄には該当しなくても、ほかのアプローチから慰謝料獲得が可能な場合もあります。

悪意の遺棄に該当するかどうかの判断にあたっては、専門知識が必要ですので、迷った場合には弁護士に相談しましょう。

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