離婚後の共同親権とは? 導入によるメリットやデメリット、養育費への影響についても解説
離婚後の親権について、共同親権と単独親権のどちらかを選択できるようになりました。共同親権とした場合、離婚後の父母と子どもの関係は今までと大きく変わります。養育費の支払いや面会交流に与える影響、共同親権のメリットやデメリットについて解説します。
離婚後の共同親権とは? 新しい親子関係やメリット、デメリットも解説
2026年(令和8年)4月1日から離婚後の親権を共同親権と単独親権のどちらかから選択できるようになります。
共同親権とした場合、離婚後も父母の双方が子どもとの関係を維持しやすくなり、子育てで協力し合ったり、養育費の支払いが促進されたり、面会交流をしやすくなるメリットが指摘されています。
一方で、子どもの虐待やDVが続くリスクや元夫婦間に火種を残してしまうリスクもあります。
共同親権により離婚後の親子関係がどのように変わるのか、単独親権との違いについて解説します。
離婚後の共同親権とは?
離婚した際、未成年の子どもがいる場合は、その未成年の子どもの親権者は、母親または父親の単独親権となるのがこれまでの原則でした。
離婚後の共同親権とは、離婚した後も、単独親権とせず、父親と母親の双方が親権を持つことができる制度です。
令和6年5月17日に、民法等の一部を改正する法律が成立したことにより、共同親権制度が導入されることが決まりました。
共同親権制度が開始されるのは2026年(令和8年)4月1日
2025年(令和7年)10月31日に政府が閣議決定を行い、離婚後の共同親権制度の導入を柱とする改正民法を2026年(令和8年)4月1日より施行することが決まりました。
離婚後の共同親権のほか、離婚時に養育費の取り決めを行っていなかったとしても、別居親に養育費を請求することができる「法定養育費」の制度も導入されます。
これにより、離婚後の子どもの親権や養育費を巡る問題は大きな転換点を迎えることになります。
親権とは?
親権とは、未成年の子どもを養育する父母が有する権利や義務の総称のことです。
親権の主な内容は民法820条以下に定められていますが、概ね次のとおりです。
- ・子どもの身上監護権
- ・子どもの財産管理権
- ・子どもを経済的に扶養する義務
一つ一つ確認しましょう。
子どもの身上監護権
子どもの身上監護権とは、子どもを監護し、教育する権利や義務のことです。子どもと同居して子どもを育てたり、学校に行かせて教育を受けさせたりすることを意味します。
その他に明記されている権利義務としては、子どもの居所の指定や職業の許可等が挙げられます。
子どもの財産管理権
子どもも自分の名義で財産を持つことができますが、様々な契約を結ぶには、法定代理人の同意が必要です(民法5条)。
例えば、子どもがスマホの契約を締結したり、銀行と預金契約を締結するような場合です。
また、法定代理人は子どもの契約締結行為を代理したり、取り消したり、追認することもできます。
親権者はこうした法定代理人としての職務を行うことになります。
子どもを経済的に扶養する義務
子どもの衣食住に必要な費用を支出することはもちろんですが、病気などになった際は医療費、学校に入学する際の授業料、習い事の月謝など、子どもを扶養する際は様々な費用がかかります。
親権者はこうした費用を負担して、子どもを経済的に扶養する義務があります。
また、親権の有無にかかわらず、子どもの実親は、離婚後も子どものために養育費を支払う義務があります。
改正民法施行後の親権
改正民法が施行された後は、親権の行使方法が明確化されます。
改正民法818条1項では、「親権は、成年に達しない子について、その子の利益のために行使しなければならない。」と定められており、親権が子の利益のために行使すべきものであることが明記されました。
また、「子の人格を尊重するとともに、その年齢及び発達の程度に配慮しなければならず、かつ、体罰その他の子の心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならない。」とされています(民法821条)。
さらに、「父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。」ものとされています(民法817条の12、2項)。
離婚後の親権の決め方
2026年(令和8年)4月1日に改正民法が施行された後は、離婚後の親権については、共同親権と単独親権のどちらかから選択することになります。
離婚の方法には、協議離婚、調停離婚、裁判離婚の3つがありますが、親権の決め方はそれぞれ異なります。
協議離婚の場合
協議離婚は、夫婦が離婚届を作成して、市区町村役場の窓口に提出するだけで成立します。
第三者が介入することはなく、自分たちの判断だけで、離婚できますし、共同親権と単独親権のどちらを選ぶかも、自分たちだけで決めることができます(民法819条1項)。
それだけに、共同親権と単独親権がそれぞれどのような親権なのか、メリット、デメリットをよく理解しておくことが大切です。
調停離婚の場合
調停離婚は、夫婦だけで離婚協議をまとめられない場合や話し合いができない場合に、家庭裁判所に申し立てを行うことで、裁判官や調停委員が夫婦の間に入って話し合いを進めていく方法です。
調停離婚では、調停委員が話し合いをリードしてくれますが、調停を成立させるためには、夫婦の双方が離婚に納得しなければなりません。
どちらかが納得できない場合は、調停が不成立になります。
調停離婚でも、共同親権と単独親権のどちらを選ぶかは、離婚する当事者が決めなければなりません。
もちろん、裁判官や調停委員が当事者の事情に応じて、共同親権と単独親権のどちらが最善かアドバイスしてくれることもありますが、最終的に決めるのは当事者ですから、共同親権と単独親権の意味やメリット、デメリットを理解している必要があります。
裁判離婚の場合
裁判離婚は、調停離婚が不成立となった場合に、裁判所に離婚の訴えを提起できるというものです。
裁判離婚には、次のような法定離婚事由が必要です(民法770条)。
- ・配偶者が不貞な行為をしていた。
- ・配偶者から悪意で遺棄された。
- ・配偶者の生死が3年以上不明。
- ・その他婚姻を継続し難い重大な事由がある。
こうした法定離婚事由があると裁判所が認めた場合に離婚を命じる判決が下されます。
また、共同親権と単独親権のどちらにすべきかということも、裁判官が判決で決めます(民法819条2項)。
様々な事情を考慮して決められますが、共同親権と単独親権のどちらかの希望があるなら、裁判の中でしっかりと主張することが大切です。
離婚後の共同親権の行使方法
婚姻中は父母が共同して親権を行使します。例えば、子どもの財産管理などについて決める際は、父母が話し合って決める形になります。
離婚後も共同親権とした場合は、婚姻中と同様に子どもの親権行使の際は父母で話し合いを行う必要があります。
具体的には子どもを監護する親が、非監護親に事情を説明して同意を求める形になります。
ただ、子どもを監護する親が単独で親権を行使できるケースもあります(民法824条の2)。
次のような場合です。
- ・監護及び教育に関する日常の行為に係る親権を行使する場合。
- ・子の利益のため急迫の事情がある場合。
- ・家庭裁判所が親権の単独行使を認めた事項について親権を行使する場合。
このうち、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権を行使する場合とは、日々の生活の中で生ずる身上監護に関する行為で、子どもに対して重大な影響を与えないものを意味しています。
また、子の利益のため急迫の事情がある場合としては、
- ・DVや虐待からの避難をする必要がある場合
- ・子どもに緊急の医療行為を受けさせる必要がある場合
- ・入学試験の結果発表後に入学手続きの期限が迫っているような場合
などが挙げられています。
離婚後、共同親権となった場合の子どもの監護方法
離婚後、共同親権となった場合、子どもは父親と母親のどちらが監護することになるのか? と疑問を抱いている方も多いと思います。
共同親権になると、父親と母親のどちらにも子どもを監護する権利が生じてしまい、子どもの取り合いになってしまうのではないかと危惧される方もいらっしゃるでしょう。
結論から言うと、共同親権となった場合でも子どもを監護する親をどちらか一方に決めることができます。もちろん、子の監護の分掌を決めて協力し合うことも可能です(民法766条)。
監護する親を一方に決めた場合、監護する親は、
- ・子どもの監護及び教育
- ・子どもの居所の指定と変更
- ・子どもの営業の許可、その許可の取消しや制限
については、単独で行うことができ、親権を有する親でも監護する親の行為を妨げてはならないことになっています(民法824条の3)。
逆に言えば、離婚後の子の監護に関する事項の定めをしっかりと決めていない場合は、どちらも親権者であることから、子どもの監護権を巡って、親同士が争う事態も生じかねません。
離婚後に共同親権とすることのメリット
離婚後に共同親権とすることにはどのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
親権をめぐる親同士の争いを避けられる
これまでは、単独親権しか選べなかったことから、親権をめぐって親同士が激しく争い、離婚協議が長期化したり、子どもの心身にも大きな負担を与えてしまうことがありました。
共同親権を選択できるようになったことから、こうした争いが生じにくくなる点がメリットと言えます。
ただ、共同親権としても、どちらが実際に子どもと同居して子どもを育てるのか、つまり、子どもの監護権を巡る争いは依然として残ります。
上記で解説したとおり、離婚後の子の監護に関する事項をしっかりと定めることが大切です。
非監護親(別居親)から子育ての協力を得やすくなる
単独親権の場合、親権を得られなかった親は、親として子育てに関わりにくい状況が生じていました。
特に、単独親権者=監護権者となるケースでは、非監護親(別居親)は、子どもとの関わりが極端に減ってしまい、養育費の支払いのみしか接点がなくなることもあります。
次第に子どもとも疎遠になってしまい、子育てに協力しにくくなることもあります。
共同親権とした場合、非監護親(別居親)も重要な場面で、親として子どもと関わりを持つことができ、日常的な子育ての場面でも協力しやすくなることが予想されています。
面会交流がしやすくなる
単独親権者=監護権者となるケースでは、非監護親(別居親)は子どもとの面会交流がしにくくなりがちです。
監護親が非監護親との面会交流を制限し、非監護親と子どもが交流する機会が途絶えてしまうこともあります。
共同親権とした場合は、非監護親も親権を有しているため、子どもとの関わりを維持しやすくなり、面会交流もしやすくなることが期待されています。
なお、改正民法では、面会交流に関する規定が整備され、親子の交流については、子の利益を最優先して考慮しなければならないことが明記されました(民法817条の13)。
養育費が支払われやすくなる
母親が単独親権者=監護権者となるケースでは、非監護親(別居親)である父親に対して子どもの養育費を請求できることが多いです。
しかし、親権も監護権もなく、子どもとの関わりが少なくなった父親は、養育費の支払いが滞りがちになります。
その点、共同親権とした場合は、非監護親にも子どもの養育についての権利義務が残ることから、養育費の支払いが滞りにくくなることが期待されています。
離婚後に共同親権とすることのデメリット
離婚後に共同親権とすることにはデメリットもあります。どのようなデメリットがあるのか見ていきましょう。
子どもの虐待やDVが続くリスクがある
子どもの虐待や夫婦間のDVが離婚原因である場合は、共同親権にしてしまうと加害者の親からの虐待やDVが続くリスクがあります。
このような場合は、加害者の親との関係を極力断つことが大切なので、単独親権とし、監護権も与えないようにすべきです。
なお、裁判離婚では、親の虐待やDVにより子の利益を害すると裁判所が判断した場合は、単独親権とすることが義務付けられています(民法819条7項)。
そのため、子どもの虐待や夫婦間のDVがある場合は、安易に妥協せず、調停離婚、更には裁判離婚に持ち込んで、虐待やDVの事実を粘り強く主張することが大切です。
元夫婦間に火種を残すリスクがある
円満離婚ではなく、何らかの争いが原因で離婚している場合は、共同親権とすることは避けたほうがよいです。
共同親権とした場合、子どもに関する重要事項を決める際は、親権を持つ親にも連絡を取り、状況によっては話し合いを行って決めなければならないことがあります。
例えば、
- ・子どもの進学先を決めること。
- ・子どもに重大な医療を受けさせること。
- ・子どもの財産管理。
については、双方の親の合意が必要になります。
こうした話し合いがまとまらないと、離婚後も元夫婦間で争いが生じてしまい、子どもも父母の争い事に巻き込まれて、心身ともに負担がかかってしまうことがあります。
単独親権を共同親権に変えられるのか?
2026年(令和8年)4月1日に改正民法が施行された後は、それ以前に離婚している方も、単独親権から共同親権に変更することが可能になります。
なお、親権の変更のためには、家庭裁判所に親権者変更調停・審判を申し立てなければなりません。
親権の変更は、「子の利益のため必要があると認めるとき」のみできるとされており、簡単に認められることはありません(民法819条6項)。
単独親権から共同親権に変更することを検討されている方は、離婚問題に詳しい弁護士のアドバイスを受けて準備を進めておくことが大切です。
まとめ
2026年(令和8年)4月1日に改正民法が施行された後は、離婚後も共同親権とすることが可能になります。
従来の単独親権とは親子関係が大きく異なるようになるため、共同親権を選択するに当たっては、メリットやデメリットを良く理解することが大切です。
共同親権を選択すべきか、単独親権から共同親権に変更するにはどうすべきかなど、分からないことがある場合は、離婚問題に詳しい弁護士にご相談ください。









